BODYMAKER×アスリート(7)京都明徳高校ダンス部
昭和34年から創作ダンス部が始まった京都明徳高校。
今では全国大会毎年出場という強豪のダンス部、その秘密に迫りました。

 BODYMAKER×アスリート(7)京都明徳高校ダンス部 顧問 岩倉真紀子氏

BODYMAKER×アスリート(7)京都明徳高校ダンス部

岩倉 真紀子(いわくら まきこ)

京都明徳高校 ダンス部顧問。
2014年3月、American Dance Drill Team Nationals/Internationals Competition
(ミスダンスドリルインターナショナル)にて総合優勝、HIPHOP優勝など
数々の大会で頂上に輝くダンス部に育て上げた。
京都明徳高校公式サイト(外部サイトにリンクします)


 「できない」を「できる」に変えていく


―ダンス部の指導を始めた経緯についてお聞かせください。
私は、中学・高校・大学・社会人までソフトボール一筋でした。高校教諭となり、ソフトボール部の監督を22歳から26歳まで続けていました。ところが27歳のとき、配置転換でダンス部顧問になったんです。始めは断りましたよ。ダンスの経験もないし、ソフトボールをずっとやってきたプライドもありましたから。でも、目の前にダンスをやりたい生徒たちがいるのに放っておけない。「好きに運営していい」と言われたので、始めは創作ダンス部でしたが、1999年ストリートダンスに変えました。スクールに通う時間はなかったですね、駅前で踊っている子を見て勉強。我流、独学、ダンスを教わった経験はありません。それでも今年で15年目です。

―ソフトボールに情熱をそそいでいたのに、自分で希望してもいない「ダンス部」に配置転換になったとき、不本意だったのでは。それでもふてくされず、ダンス部を率いておられます。
意地とプライドだけですよ。嫌なことも批判もいっぱい受けました。「ヒップホップなんてちゃらい」って。それなら結果を残していこう、スポーツとして成績を残そうと思いました。それはソフトボールだろうがダンスだろうが変わらない。「3年かけて全国大会に行く」という目標を立てたんです。表彰台に初めて登れたのは2008年。これをきっかけに"世界"を視野に入れ始めました。「全国大会で一回表彰台に登れたら、世界大会に行かせてください!」と理事長に直談判しましたよ。資金を工面してほしいから、ダメ元だけど目標は口に出す。

―「全国大会、世界大会に行きます」と言っても、簡単に行けない場所へ行くのは並大抵の努力ではなかったはずです。思春期の生徒たちを率いていて、真剣であるがゆえにぶつかりあったことは?
最初の頃はたくさんぶつかりました。"全国大会に出る"という目標を達成した学年を見ていた後輩は、「あんなにすごい舞台に行けるのか、すごい!あこがれだけじゃなくて、実際に全国大会に行くには先輩の2倍以上練習しなきゃ」と思うサイクルが出来てきました。全国は2008年から2013年まで、ずっと表彰台に上っています。
世界大会に行くときは、子どもとも保護者さんともぶつかりましたよ。最後まで行きたい生徒、最後まで応援したい保護者。お金もかかったし、何としても勝たねば帰国できない雰囲気の、いわゆる背水の陣です。

つながりを感じてもらいたいんですよ。「ダンスは身体表現だ。感謝する気持ちを2分半で全力で出せ。保護者の方々、友達、先輩後輩、いろんな人に感謝を伝えていける手段、それがダンスだ」と常日頃言っています。自分の仕事の内容がどうこうというよりも、"子どもたちが頑張れば、成功体験が自信につながる"ってことを教えたいんです。まっすぐすぎるくらいまっすぐな子どもたちに答えたい。自分がぶれると子どもたちもぶれる。ブレない気持ちを指導者として持っています。周りに何と言われようと自分は自分。「よそはよそ、うちはうち。明徳らしさが、どの会場でもどんな状況でも、意識しなくても当たり前に出るダンスを」って言っています。

私の高校時代、ソフトボールで全国大会に出て日の丸を背負った嬉しい気持ち。その気持ちを子どもに持ってもらいたいんです。「ダンスを本場のアメリカで闘うんだ」というプライド。保護者さんも巻き込みますよ、「そんな一生懸命頑張っている子どもさんの親御さんがあなただ」というね。今では全面的に協力をしてもらって助かっています。でも、結果を残さないと人はついてこない。結果を残すためにストイックな人間なんですよ、岩倉というやつは。
BODYMAKER×アスリート(7)京都明徳高校ダンス部

―世界大会連覇となると、頂上から落ちてしまう心苦しさを感じているのでは。
毎年プレッシャーは感じています。「岩倉先生」というスーツを着ればできないことを「できる」という人間に変わる感じ。子どもたちにも「二兎を追うものは二兎を得る!追い方を間違えなければいい」と言ってきかせています。大きなことを言えば言うほど自分にプレッシャーがかかるけど、それを実行していく。それで子どもの信頼を得る。世間がつくる、子どもが作る"岩倉先生像"以上のことを出したいんです。弱音は吐きたいですよ、でも子どもや卒業生はそれを期待していない。強い岩倉先生を期待しているし、自分もそうでありたい。「いつか負けるという恐怖感があるけど、負けるのは今年ではない」と言い聞かせながら指導しています。子どもは3年で入れ替わるので、新しい子どもたちと新しいチームを作っていっています。

―世界大会ではBODYMAKERのロングスパッツを着用して頂いています。選んでいただき、ありがとうございます。選択のポイントは何でしたか?
BODYMAKERの商品はいいと思っています。価格的には他と全然ちがう。クオリティはいい。高校生が使えるし、うちの運動量でひざや足首への負荷を軽減してくれるサポーターがすごい。メンバーが多く、数がたくさんいるので買いやすいのは重要です。もの自体使いやすいから、在庫をたくさん持ってください(笑)実際に自分で使ってよかったから、BODYMAKERのロングパンツを衣装に取り入れたんです。アイシングバッグもアメリカで使いました。怪我人出たのでアイシングしました。その様子が密着取材のテレビに出ています。

BODYMAKER×アスリート(7)京都明徳高校ダンス部
―義務教育ではダンスの授業が必修化されました。高校ではどのように教えていますか。
「サッカーでドリブルして」と言ったら、たいていの生徒はできるでしょう。「バスケでシュートして」と言ったらできるでしょ。 そこで「ブルックリンやって」と言われてもできないでしょ。これはダンス用語なのですが、実際に教師がダンスの見本を見せられるのが強みです。授業中、教師が動いている時間は非常に大きいですよ。そこにもこだわりがある。明徳でダンスやってよかった、と思える授業をしたいですね。「ひとつできた!」という感覚を持ってもらうというのが授業の目標。できなくてもワーワー頑張ってみる姿勢が大事です。先生にダンスのレクチャーをすることもあります。中学校で出前授業することもあって、それでダンスに興味を持ってくれて、本気でやりたいなって子がいれば明徳にきてくれる。

授業と違って、クラブの場合は勝ちにこだわり、てっぺんにのぼることを意識しますけどね。ダンス部でも本当は笑ってやりたいんですよ。でも、はったりでもドーンと構えておかないと。100人弱在籍するチームを率いるためにまとめていかなあかんので。

BODYMAKER×アスリート(7)京都明徳高校ダンス部

―先生は素人と言いながら、独学でダンスを習得し、今ではたくさんの方に教えています。
自分が作った振付、音楽、デザインした衣装、構成で子どもたちが勝つことが、単純にすごいな!と思いました。こんなド素人でも為せば成ると思いました。なら若い子どもたちの方が可能性がある、ポテンシャル高いです。

"変化は進化" ずっと使っている言葉です。自分が変わりたいという気持ちが変化の第一歩。今年の自分はこうありたい、違う一面が出せるようになりたい、この気持ちがある限り進化する。
「M's E-Crew」(エムズ・イークルー、"Meitoku Evolution Crew=明徳 進化 乗組員の意)
この名前を毎年毎年つないでほしいです。「変わりたい、やったろやないか!」という気持ちが変わっていくきっかけ。 階段を、止まったことも崩れたこともあったけど、まっすぐ上ってきました。まだまだ変われることがあって、それを気づかせてやりたいです。
BODYMAKER×アスリート(7)京都明徳高校ダンス部

ダンス界とまで大それたことは言えないけれど、ダンス部のイメージを変えたかったんです。お化粧したり衣装が派手なところから、素行が悪いって思われるから。ダンス部顧問を始めたときはマナーがよくなかった。ゴミ散らかしたり、音楽ガンガンしたり。本人たちは頑張ってダンスしているのに、マナーが足を引っ張って熱意が伝わらなくなるのはもったいないと思った。活躍する場をクラブとして作れば、ダンスをもっとできるんじゃないか。礼儀、マナーを一緒にやっていこう、「もう一回ダンスを見たい」と思ってもらえるダンス部を作ろうと決めました。最初は厳しく言いました。「ダンス部で着るユニフォームはきっちりしているのに、学校のユニフォームである制服を着崩しているのはカッコ悪いことや!」って怒りました。あいさつすることはコミュニケーションのひとつだ。ダンスを見て「かっこいい、すごい」と言ってもらうんやったら、あいさつをきちんというべきや、ってね。「これからダンスを始めます、宜しくお願い致します」っていうのは当たり前。社会に出たときに通用するようにね。上座、下座も教えるため、3年生が上座に座ることも教えています。卒業生のアルバイト先では、あいさつできるし声も大きいし、ちょっと先のことを考えて「あれやりましょうか」と言える子たち。重宝されているみたいですよ。

―ダンス部を巣立っていった生徒は。
初めて全国大会に行こう!といった学年の部長が、卒業後2007年から7年間、一緒にコーチをしてくれました。二人で振りを作ってやってきました。彼女は卒業後ダンスの専門学校になってインストラクターになって、自分の右腕以上になってくれた。ですが「独り立ちしたい」という新しいビジョンを持ってくれて、明徳のコーチを終え、巣立って行きました。正直さみしいけど新しい門出を応援したい。今年からは新しくコーチになってくれた子と指導しています。

卒業生には「ここはおまえたちの帰ってくる場所だよ」と言ってます。「現役の子はここを守る役割がある」と言いきかせています。先輩たちが帰ってくる場所を維持するだけじゃなく、上にあげていく。後輩に託していく環境。

BODYMAKER×アスリート(7)京都明徳高校ダンス部
―先生は本当にすごい、の一言に尽きますね。メディアの取材でもよく言われるのでは。
自己評価が高くないので、みなさん「いい」とおっしゃっていただくのですが、何が面白いんですかね。自分の考え方は至ってシンプルですよ。「周りのことより自分のことを突き進んでいくのが面白い」って言われます。いろんな角度から自分を見て貰っているし、周りから見られている。岩倉のどこに興味をもっておられるのか、そこを伸ばしていかないと。密着取材でメディアで放送されて、保護者がそれを見て「うちの子こんな顔で頑張ってやってるんや、私も頑張ろう」と思ってくれる。卒業生にも届きますからね。「うわ岩倉、まだこんなやっとんねんな!」って。うちもチームを知ってもらいたいし、人を励ますことにつながるといいですね。

―幸せな生徒さんとの関係です。

大事やから怒るし、
大事やから褒めるし、
大事やから突き放すし、
大事やから声をかける。

大事じゃなかったら怒るなんてエネルギーを使わない。人を傷つけたり裏切ることは絶対だめなことで、自分がそれをしてしまうと子どもたちも見ています。指導者は、見られてるんですよ。しんどそうな顔も見られているし。子どもたちには大事にしてもらっています、私。

―先生冥利につきますね。
普段あんまり生徒を褒めないです。「"お前たちがいるから今の岩倉があるんやー!"って直接言わんけど、先生はこう思ってるんやな」って。生徒はこういうインタビューで知ることになります。(笑)演技がよかったら「上出来や」って褒めますけどね。子どもたちは褒めてもらいたいんです。そのために、自分がいっぱい切り札をもっておかないと。いっぱいいろんなことをしていかないと。

卒業してからわかること。それでいいんです。それが必要なことやったんや、嫌々やらされてるんじゃなくて、必要なことやったんや、ってわかってくれたらそれで十分です。

 BODYMAKER×アスリート(7)京都明徳高校ダンス部 キャプテン 加藤美帆さん

BODYMAKER×アスリート(7)京都明徳高校ダンス部

加藤 美帆(かとう みほ)

京都明徳高校 ダンス部キャプテン(2014年5月現在)。


 全員で世界を目指す



―すごく柔らかい、ささやくような声でお話しする加藤さん。スポーツ部の部長のイメージとは離れています。キャプテンは岩倉先生が決めたのですか?
そうです。でも、皆をまとめるのうまくないですし、そこが自分にとって課題だと思います。喋り方がゆっくりで、それではチームをまとめきれないので、早くしゃべろうと思っています。

―中学の頃からダンスをしていて、ダンス部に入りたかったから明徳高校に入学したそうですね。
「入学したい」と言ったときに、親になぜこの学校にしたの?と聞かれました。岩倉先生にあこがれて、ダンスを高校でも続けたいと希望しました。ダンスをしているとチャラチャラしているイメージを持たれがちですが、そう言われないように、岩倉先生に礼儀を一から指導してもらってます。

―中学と高校、違いはありましたか?
より厳しくなりました。楽しいですし、大会に対する気持ちが今までと全然違いました。スキルは前よりはうまくなったかな...。

―学校生活の流れを教えてください。
朝練は無くて、6時間目が終わって夕方からダンス部の練習をします。3時間くらいやっています。帰ってからヘトヘトです。土日は早く来て、できなかった部分を練習します。

BODYMAKER×アスリート(7)京都明徳高校ダンス部
―BODYMAKERのウェア、どうですか?
岩倉先生が大会のユニフォームに選んでおられます。練習着にも着てる子がいます。
―大会では緊張しますか。

緊張しますが、勝つために練習してきたことを思い出します。緊張していても堂々と踊って、自分たちのダンスを見てもらえるように意識しています。

―世界レベルのチームをまとめるのは並大抵ではありません。誰かなんとかしてよ、って弱音な気持ちになることはありませんか?
結構あります。でも、みんな私のことを分かってくれている安心感があります。私が困ってたら「次はこれをしたらいいよ」って周りがアドバイスしてくれます。「一人でなんとかしなきゃ」と考えるのではなく、みんなが力になってくれる。そこはありがたいです。

BODYMAKER×アスリート(7)京都明徳高校ダンス部


【取材後期】
生徒の皆さんはこちらが驚くほど礼儀正しく接してくださいました。これが取材だからではなく、普段からごく自然にできている様子が伺えました。目の当たりにしたダンスは圧巻の一言。インタビュー時の穏やかさとは一転した、気迫あるダンスで魅了されました。
ダンスに対して全くの素人だった岩倉先生が、ダンス部顧問として活動を初めて15年。その足跡は決して平坦ではなく、ただひたすら「できる、やりきる」と自身と生徒に発破をかけて切り開いてこられました。道無き道を駆け抜け、これからも続くM's E-CREWの挑戦を、BODYMAKERはこれからも見守っていきます。

京都明徳高校ダンス部を密着取材した番組が放映されました。
2014年5月24日(土)16:00~16:55 ABC放送「LIFE~夢のカタチ~」

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