BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手
山口賢一選手は、海外の試合に積極的に出場するプロボクサー。彼という草分けがいたからこそ「海外」という大舞台でベルトを取りに行く高山勝成選手の道筋も開けてきました。選手であり、ジム経営者であり、高校大学のボクシング部監督もする、山口賢一選手にインタビューしました。

 BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手

BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手

山口 賢一(やまぐち けんいち)

元WBOアジア太平洋スーパーバンタム級暫定王者。
大阪天神ジム会長。
大阪天神ジム公式サイト(外部サイトにリンクします)


 考え方ひとつで行動が変わる、行動を変えると自信につながる



■取材当日、山口選手は高山勝成選手の試合前スパーリング練習に向かうことになりました。取材班は急きょ高山選手が練習する仲里ジムに同行させていただきました。

BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手

―BODYMAKERのミット、使っていただいています。ありがとうございます!
パンチングミットカーブ、カーブしてるからええよ。音いいし、軽いし。注文付けるなら、手の甲にカバーほしいな。このサウナスーツもええやん!

―ありがとうございます。ところで、山口選手がボクシングを始めたきっかけは?
僕、小さい頃空手やって、高校で野球やって。それから大阪戻ってきて、「こまいち」ってうどん屋でツレとよく酒飲みに行っとったんです。そしたら店のオバハンがね、「そんなん飲まんでボクシングやり!」としつこく言ってきたんです。ハタチそこそこのとき、そんな訳わからんオッサンの話聞かへんやん。最初オッサンやと思っとったからね、オバハンやと気づかんかった(笑)。ただ、辰吉さんをテレビで見たり、近所やったから時々本人を見かけたり、僕もボクシングに全く興味がなかった訳ではないからね。あるとき、こまいちのオバハンがボクシングのチケットくれて、タダやし試合見に行ったんです。実際に試合見てみると、パンチ見えたんですよ僕。野球やってたしスピード見るのには慣れてた。で「あんなパンチよけれるやろ!」思った。「思ったより自分いけるかもしれんなあ、できるんちゃうかな」と運動能力的に思ったわけ。それでジムに入ろうとしたら、こまいちのオバハンは「大手は行くな」と言ったけど、大きなジムがええなー思って大手のジムに入りました。

BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手
■取材班は偶然、そのジム近くを通りました。

―山口選手を通してどんどん人がつながっています!
■ここで、ずっと山口選手と同行している人物が山口賢一後援会会長だということがわかりました。

この人が後援会会長ですよ。僕はこんな人になりたいですよ、自由なオッサン(笑)。ボクシングばーっかり見てる。僕はマスター(後援会会長)に会って人生変わりましたわ、マスター取るかジムとるか。3秒くらいでマスターとるって決めたけど(笑)。嫁さんより付き合い長いっす。支えてもらってますね。

山口賢一選手(左) 大阪天神ジム練習生(中) 山口賢一後援会会長(右)
BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手

―高山選手と知り合いになったのはいつですか?
高山が新人王になったときやね、18歳の高山と、21歳の僕がプロになって2試合目のとき。12年前か・・・。こまいちのオバハンが「山口っちゅうのがおるから声かけてみ」って高山に言ったんです。それから知り合いですね。今では二人ともこまいちに応援してもらってます。

―高山選手は誠実な青年という印象ですが、山口選手といるときはもっと気さくなんですか?
僕が菊華高校にいる恩師に挨拶行くとき、高山も連れて行ったんです。そこのボクシング部監督に僕がなるって話が出たとき、「そういえば高山って高校行ってないな、おまえ高校生なっとき」って言ったら、だんだん本人もヤル気になって進学が決まった。こんなオモロイ話題作るのん僕しかおらんでしょ(笑)。あいつの喋り、真面目やからね(笑)。ボクシングの話しかしない、高山は。僕らボクシングでしかつながってへんからね、普段遊ばへんもん。会ったら一日中ボクシングの話。ひとつのことをずーっとやりつづける、努力の天才ですね。運動能力がめっちゃあるわけじゃないです。高校の運動測定でも、「世界チャンピオンやから足も速いんやろなー」思たら、そんないいタイム出ん。みんな「え?」って目がテンになってますもん(笑)。彼がボクシングでベルト取ってきたのは、努力の賜物ですよ。

BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手

―山口選手は中出トレーナーとも親しくされていますね。
海外の試合に行ったとき、中出さんと僕でコンビニいこか、って言って、街に出たんですよ。そしたら子どもがきて、何語かわからんけどワーワー言ってる。「サイン欲しいんやな」って書いてあげようとしたらどうも違う様子で、結局それは終わったんですけど、「ひょっとして、これってオヤジ狩りにあってた?」って後から気づいた(笑)。中出さんなんかまったく気づいてなかったからね、カツアゲにあってること。ナチュラルディフェンス(笑)。中出さんはそんな人で、懐が大きい。僕ら頼んだら何でもしてくれますよね、いっぱい相談も乗ってくれる。高山は「中出さんみたいになりたい」って言いますね。高山と中出さんは人生ですよね、人生掛けて一緒。うらやましいですよね、今の日本が忘れたような師弟関係。普通、ジムが変わったらトレーナーも変わるボクサーって多いんですけど、高山はジムが変わっても中出トレーナーと一緒。ボクサーとトレーナーって信頼関係なんですよ。ボクシングって気持ちでやるスポーツやから。

高山勝成選手と中出トレーナー(左下)
BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手
高山選手の試合に同行する山口選手(青い法被)
BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手

―高山選手の試合前に取材させていただけると思いませんでした。試合前は人に会いたくなくなるものではないのですか?
試合前は「近寄るなオーラ」、自分の世界を作るボクサーはいっぱいいます。たまたま僕はそんなことなくて、特に人に会わんということもないです。海外出たら、僕ら試合に呼ばれる方やから、いつでも試合に出られる準備をしとかんとダメ。普段の練習は試合やと思ってやってるからね。せやから緊張もしないし。逆に試合は練習やと思ってやってるからね。毎日試合やと思ってやってるから緊張とかしてられへんでしょ。考え方やね。いっつも課題考えて練習してますね、僕は。

白グローブが高山選手(左) 赤グローブが山口選手(右)
BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手
BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手

―教えるときも、自分で考えるように指導しているのでしょうか。
教えるときも、練習生に自分で課題考えさせるようにしてます。「今日は何の練習するんや」と、それは練習生に絶対聞きます。スタミナない子はどうやったらスタミナつくか、スピードない子はどうやったらスピードつくか、考えてやりなさい、と。だから成長するのが早いですね、自分で考えてやってるから。トレーナーにやれって言われても身にならんでしょ。考え方を教えてるようなもんですよ。一人一人目標が違うからね。やるのは本人やから。

―ジムだけでなく、家に帰っても考えることにつながりますね。
僕はそれを手伝ってあげてるだけ。僕が「あれやれ、これやれ」は言わないんですよ。「アドバイスやと思ってやりなさい」ということはジムに来てる全員に言うてますね。僕のアドバイスがいいと思ったらやったらいい、やらんでいいと思ったらやらんでいいと。自立性を持たせるためにね、長所を伸ばして、短所をなくす、と。僕はずーっとね、そうやってきたんでね。僕は自己流っす。ボクシングの勉強してきた。まあ、プロ意識だけなんですよ。僕は、プロ意識をどこで学んだか言うと、高校のときの監督なんすよ、野球の。その監督が「プロはこう考えるんや」ということを教えてくれはって、ボクシングでやっていって段々分かって来た。それが自信になってきたんです。

BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手

―自分で考えて習得してきた結果、自信になったのですね。
そうそうそう、自分を信じると書いて自信でしょ。僕は全く勉強できひんかったけど、ボクシングに関してはめちゃくちゃ勉強しました。試合を見に行ったり。ボクシングのボの字も分からへんかったからね。地元に辰吉さんおったんで、世界チャンピオン言うたら辰吉さんしか知らんかった。調べていくと、こんないっぱいおったんや、って。そこからのスタートですからね。

―海外に出てすぐ試合オファーがあり、山口選手はチャンピオンになっていったのですね。
たまたまね、高山に僕のフィリピンでの試合でセコンドしてもらって。僕がチャンピオンになれたのは、オーストラリアで高山がセコンドやってくれて、冷静に見てくれたからなんですよ。僕も海外おったら高山しか信頼できる人物がおらへんから。それで帰ってきたらベルト粉々になっとった。間違えて高山が踏んだんです(笑)。普通踏みます?人のベルト(笑)。あれ修理済ですよ(笑)。
海外出てない日本の世界チャンピオンは、海外で知られていないんですよ。カルチャーショックですよね。ほんまの世界チャンピオンってのは世界中の人に知られてることですよね。僕は海外出て戦って知名度をあげていくことを考えました。僕が最初に海外のボクシング試合出たとき、日本と全然システムが違ってびっくりしたんですよ。日本でしか試合をやってないと、海外の事情が分からへんでしょう。チャンピオンになったら、その上のことが見えてきますからね。高山選手以外の選手もどんどん海外で試合したら、もっと面白くなるでしょうね。マニー・パッキャオとも戦える。それもね、ひとつのボクサー人生。

BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手

―山口選手が海外で活躍する姿を間近で見て、高山選手も海外に出る決心をされたそうですね。
高山はJBCの傘下選手やめたとき、「ほんまに海外やんの?」って周りに言われたけど、いい顔してましたね。WBA、WBC、みんなベルト持ってるから、日本の誰も持ってないベルト取りにいく価値あるでしょ。苦労は確実にしてますからね。日本の当たり前と海外の当たり前、全然ちゃうからね。日本はきっちりしてるから、日本やと何ヵ月後に試合あるって決められるけど、海外の試合はつぶれてばっかり。いつ出来るか分からない試合のために練習して、試合に参戦して、って、ボクシングへのモチベーション保つの大変やと思いますよ。それでも高山、僕には弱音吐いたことないですねえ。正直ね、僕は今の高山がやっているようなことをやりたかったんですよ。彼はひたすら目標に向かって突き進んでます。

BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手

―山口選手は選手とジムの会長、二足以上のわらじを履いています。選手としてだけの立場に専念したい気持ちはありますか?
ボクシングって自分一人で絶対できない。いくら個人競技と言えど、周りの支えが無かったらここまでやってこれんかったし。考え方っすよね。日本では現役の選手でジムやってる人なんておらんからね。海外やと結構おるよ。選手としてだけじゃなく周りも見ていく、そうでないとジムの会長やれんよね、じゃないと人が付いてこないっす。僕に共感して「僕みたいになりたい」ってゆうてくれる子もあるからね、嬉しいしね、僕も。
ボクシング面白いでしょ!いろんなやつおるから。気持ちが弱いから自信つけたい人、失恋してジムに来る女性もいますね。そんな人には「しょーもないことに悩んでんなー、おまえ!」って言ってやりますね。僕の周りのやつはプラス思考しかおらへんからね、マイナス思考のやつもプラスに変わっていく。僕のチカラが強いんでしょうね。ここに来るやつなんか、ひとくせあるやつ多いけどみんなハッピーになって帰っていくからね。人生相談所みたいやね。僕はええことしか覚えてへんし、ええことしか考えへんね、マイナスなんか考えへん。天神ジムはプロの世界ガチガチちゃうんで、みんな楽しくなってくれたらいい。ボクシングもキックも総合格闘技もケンカもあり(笑)。

BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手
―山口選手は面白いですが、決してそれだけではないことに気づきました。至って真面目ですよね。
笑わしたろ思って言ってるんちゃうし、海外と日本の違いを僕が言うてるだけなんで、そこにみんな興味を持ってくれますね。選手としては、自信がなくなったときは引退します。でも僕は、まだまだ上を見てみたい。海外を視野に入れるといろんなことできますよ、いつか海外でジムやってみたいですね。


■取材後記
誰に対しても開かれた心で話しているためか、人と人との間に山口選手がいて、どんどん繋がっていくのが印象的でした。山口選手の言動は、一見すると破天荒に見えます。しかしボクシングに対して純粋であるからこそ、未知の世界を進んでいく勇気、周囲を気遣う優しさ、それらの行動がカタチとなって表れているのだと感じました。


BODYMAKER×アスリート(8)山口賢一選手
高山勝成選手、現地時間8月9日に「IBF・WBO世界ミニマム級王座統一戦」に出場します。山口賢一選手も同行予定です。



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